■about mister it

2018年に砂川卓也が立ち上げたウィメンズブランド「ミスターイット(mister it.)」。「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」で積んだ経験を元に、オートクチュールのテクニックを身近なアイテムに落とし込んだコレクションを展開している。

ブランドコンセプトは「身近なオートクチュール」

 2018年にスタートした「ミスターイット(mister it.)」。デザイナーの砂川は、エスモードパリ在学中に「2012年仏ディナール国際ファッションコンクール ・ウィメンズ部門」でグランプリを受賞。卒業後「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」に入社。コレクションラインとオートクチュールを担当した経験を元に、帰国後の2018年に自身のブランドをスタートした。


 ブランドのコンセプトは「身近なオートクチュール」。「パリでオートクチュールに携わっていた頃は、コレクションピースやレッドカーペットで歩くVIPに向けて洋服を作っていましたが、自分のブランドではオートクチュールのテクニックを使いつつ、それをもっと身近なものにしたかった。普段みんなが目にしている身近なものにちょっとしたアイデアやテクニックを加えて、ブランドらしいクリエーションを続けていきたい」と砂川はコメントしている。


ブランドを代表するアイテムは糸から開発しているシャツ


 ブランドを表現する上で欠かせないアイテムとなっているシャツ。2020年春夏にはシャツにフォーカスしたコレクションを展開するなど、デザイナー自身のこだわりも強い。シャツに使用している生地は糸から開発しており、上綿花のうち5%程しか取れない上質な超長綿で作っているという。生地の裏側に少し起毛をかけており、肌触りも抜群。デザイナーも「実際に手にとって気持ちよさを体感して欲しいです」と話す。シャツに付属されている取り外し可能なDカンや紐などで、自分自身の着こなしとシルエットを見つけることができるよう工夫されているのも特徴だ。


 また、ブランドの遊び心のあるデザインを体感するには、コートも欠かせない。リバーシブルで着用できたり襟元でさまざまなアレンジができたりと、デザイナーのこだわりが随所に反映されている。デザイナー自身も「いろんな表情で着られるのがミスターイットの特徴だと思います」と話す。

前シーズンから続くストーリーを展開した2022年秋冬コレクション

 2022年秋冬コレクションは、「Before the Flowers Bloom(花が咲く前)」というタイトルで発表した2022年春夏コレクションから続くストーリーで展開。何かが始まる前の緊張感や高揚する気分を、テキスタイルやカラーで表現している。


オリジナルプリントで全身コーディネートしたルックがデザイナーのお気に入り


 今回、フランスの伝統的な技法「トワル・ド・ジュイ」のテクニックを使用してプリント柄を制作し、シャツやスカートを制作。トワル・ド・ジュイの歴史は古く、約200年以上も前からこの技法は使われており、その年代を表す風景や植物、動物などが描かれる事が多く世界最古の漫画とも言われているという。デザインのポイントについてデザイナーは「伝統的な技法を使いながら、柄を現代の風景に置き換えてデザインしていきました。壁に落書きされたストリートアート、ガードレール、たまたま見つけた電柱カバーから生えている植物など、普段の生活ではあまり気にしない何気ない風景を取り入れています」と説明している。

デザイナーのオススメは、中古着物から作られたデニムパンツと付属の人形チャーム


 今回、中古着物の買取を行なっているバイセルと繊維メーカーのクラボウが共同企画した"サイシルク(sáisilk)"という糸を使用したデニム生地を作り、パンツやワンピースなど3型を制作。シルクの着物を使用しており、刺繍で使われていた金糸や銀糸などが裏側に少し残っている事もあり、他のデニムでは出せない上品さやなめらかさが特徴。各アイテムには人形チャームを付け、ブランドのユーモアをプラスさせた。砂川は「使えなくなった中古着物からこのようなアイテムが生まれとても嬉しい」とコメントしている。デニムは新ライン「Wednesday」として今後も展開を予定。「週の真ん中の平日に、このデニムを着てくれる人が増えれば嬉しいです」


デザインの要となる3Dで作り上げるシルエット



 ミスターイットでは、立体裁断やフィッティングを何度も繰り返し、実際に人が着用している状態でイメージを膨らましながらデザインを行なっているという。「今まで素晴らしいデザイナー達と働くことができました。彼らのテクニックやアイデアを発展させていく方法を取り入れながら、自己流のデザインを続けていきます」。